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なぜデモが起きるのか?リアクタンスの科学

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心理的に反発(リアクタンス)する理由とは 

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 政治的な問題も当然あるでしょうが、もう一つ、人々の心理的な側面にも注目しなければ行けません。

 まず大前提に、人は何かを禁じられる、または選択権を奪われる事に反発します。

 これを心理学では心理的リアクタンスと呼びます。

 リアクタンスの分かりやすい例では、目の前に置かれた赤いボタンを押すなと言われたら、どうしても押したくなる時などが該当します。

 昔話で言うところの、襖を覗かないで、と同じ感じですね。

 身近な例では、ショッピングサイトで別に欲しくない商品が「あと数点で売り切れて」しまうのを見かけて、商品を購入してしまう状況などがこれに当たります。

 ある商品がいつでも買えなくなってしまう、つまり、自由に購入する権利が脅かされてために、欲しくもない商品が急に魅力的に見えてしまうのです。

 さらにこのような傾向は既に、2歳の赤ん坊や10代の若者を対象とした研究でも明らかになっています。

 例えば、パデュー大学が行った研究で、学生達にある小説の広告を読ませました。半分の学生には「成人向け、20歳以下購入厳禁」と言う文章の広告コピーを読ませ、残り半分には年齢制限が入っていない広告コピーを読ませました。

 すると、年齢制限のある広告コピーを読んだ学生の方が、その小説を面白そうだとか、読んでみたいと感じる傾向にあることが分かりました。

 

実際の事例

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 アメリカでは、二つの面白い事例があります。

 

ジョージア州のケネソーという5400人ほどが暮らす町で、全ての成人は銃と弾薬を所有しなければいけない法律が執行されました。

 すると、町の銃砲店の小火器が爆発的に売れていったのです。ところが、銃砲店の店長のインタビューを行うと、購入者の大半が他の州から来た人ばかりで、法律に従って銃を買いに来た町の人間は2~3人程度だという事が分かりました。

 さらにフロリダ州デイド群、マイアミではリン酸を含む洗剤やクリーリング洗剤の使用および所有も禁止されました。

 すると、不法持ち込みが増えたばかりか、近隣の住民が協力して他の州までリン酸洗剤を買い出しに出かける「石鹸キャラバン」なるものまで結成し、徹底抗戦に出ました。

 また、市民は以前にも増して、リン酸洗剤を手に優しく汚れが良く落ち、簡単に処分できる優れものだと感じていました。

 

 また、人は酷く損をすることに敏感です。

 例えば1000円を「得る」のと「失う」のでは、後者の「失う」ほうを2倍も恐れ、これを「損失回避」と呼びます。

 デモや暴動の多くは何かしらの権利を剥奪された又は、されそうになっているので、先ほど話したリアクタンスに加えてある種の権利を「奪われる」「失う恐怖」によって「損失回避」が働くことで市民は行動を起こすのです。

 

歴史のデモや暴動から見る

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 皆さんは、アメリカで起こった黒人帯によるデモや暴動をご存じでしょうか?キング牧師は有名ですね。

 しかしなぜあのようなデモが起きたのか?

 大方、黒人差別が原因だと答える人が多い気がします。ですが皆さん、不思議に思いませんか?

 差別と言うなら、昨日一昨日の話ではありません。

 奴隷として船に乗せられていたときから酷い差別は受けていました。なのに300年近くもたった20世紀になっていまさら?という印象です。

 これは別に良い悪いの話をしている訳ではありません。

 反乱を起こそうと思えば、もっとはやいタイミングで起こせたはずなのにという意味です。

 

1940年から1950年にかけては、連邦法によって黒人を学校や公共区域、居住地、職場環境において差別することを禁止し、さらに黒人の一人当たりの収入が同じ教育レベルの白人の56%かから80%にまで向上しました。

 ところが、1954年に人種融合教育が始まると、一転して黒人を標的と暴力事件が頻発しました。

 また、公民権運動も警察に妨害され、1962年には収入が74%にまで後退します。

 この後に大規模な暴動に繋がるのですが、ここで重要となるのは、今まで続いていた進歩に待ったがかかることです。

 そしてこの傾向は何もアメリカだけでなく、当時のソ連でも起きました。

 ソビエト連邦崩壊直前にミハイル・ゴルバチョフは、グラスノスチ、ペレストロイカなどで市民に新たな自由を与えました。

 

 ところがゴルバチョフは、一部の政治家や軍人、国家保安員によりクーデターを起こされ、自宅に軟禁されました。

 そして、彼らはそれまで市民に与えた自由を再び剥奪しようと試みたのですが、失敗します。

 なぜなら、ロシアの皇帝やスターリンのように初めから何の権利も与えなかったわけではないからです。

 市民には一度、いくつかの自由を公式に保障しいるため、再びその自由を奪う時に激しい抵抗に合います。

 

 そんなこんなしている内に、ソ連は崩壊して今のロシアに姿を変えました。

 時の為政者が覚えるべきは、一度与えた権利を奪うのは、母熊から子熊を取り上げる行為に等しいという事です。

 鼻っから無い権利の為にデモや暴動をする人は珍しいのです。

 突然、権利・自由を奪われると、以前にもまして欲するようになり、最終的に武装蜂起に繋がる事態になるかもしれません。

 

終わりに

 

 多くの場合で政治的な手腕や政策にばかり視点が行きがちですが、なぜ人々が徒党を組んで抗議の声を挙げるのかを理解して行くのは重要な事ですね。

 


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参考文献

 

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・Brehm、J. W.(1966)A theory of psychological reactance。New York:Academic Press.

・Burgoon,M.,Alvaro、E.,Grandpre,J.,&Voulodakis、M.(2002).Revisiting the theory of psychological reactance。In J. P. Dillard and M. Pfau(Eds.).The persua- sion handbook:Theory and practice(pp。213-232).Thousand Oaks,CA:Sage.

・Howe, M. L. (2003). Memories from the cradle. Current Directions in Psychologi- cal Science, 12, 62-65.

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・Mazis, M. B., Settle, R. B., & Leslie, D. C. (1973). Elimination of phosphate de- tergents and psychological reactance. Journal of Marketing Research, 10, 390–395.

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