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メディアの自殺報道が新たな自殺を呼び込む?「ウェルテルの心理」

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ある事件の報道は別の事件を引き起こす

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 今回は、悪の社会的証明である「ウェルテル効果」について話をして行きます。

 ウェルテル効果とは、ドイツの文豪であるゲーテが書いた「若きウェルテルの悩み」という小説から取られた名前です。

 小説の主人公であるウェルテルが物語の最後で自殺してしまうというシナリオは、当時その本を読んだ人達に多大なる影響を及ぼしました。

 その影響力の大きさは、ウェルテルが自殺した方法を真似する人が多発した為、幾つかの国では発行禁止令が出されたということからも伺えます。

 しかし、ウェルテル効果を知るには、まず先に「社会的証明」を知らねばなりません。

 社会的証明とは「特定の状況で、多くの人が行うこと」は正しい判断だと思ってしまう心理を指します。(1)

どこかで聞いたことのある「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉は、社会的証明を上手く言い表しています。
(ちなみに、このセリフはビートたけしがツービート時代にコントで放ったセリフと言われています)

しかし、社会的証明自体は無害であり、上手く活用して恐怖症の克服に利用することもあります。

 例えば、アルバート・バンデューラ博士が行った実験で、犬を怖がる3~5歳の子どもを選び、別の子どもが楽しそうに犬と遊んでいるところを1日20分見せました。(2)

 すると4日後には、子ども達の67%が犬を可愛がって撫でるようになり、また犬と遊ぶ子どもの映像を見せただけでも効果がありました。

 このように単純な実験でも、簡単に恐怖症を克服することが可能であり、このような側面は言わば「善の社会的証明」と呼んでも良いでしょう。

 しかし、光あるところに影ありということで、悪い方向に社会的証明が働くこともあるのです。

 

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自殺が自殺を呼び込む「ウェルテル効果」とは

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 そしてお待ちかね、悪の社会的証明である「ウェルテル効果」(3)を紹介します。

 ウェルテル効果とは、ある種の自殺報道がされた場合、それに類似した自殺が多発するという悪魔のような現象を指しています。

 社会学者のデイヴィット・フィリップスは、アメリカにおける1947年から1968年までの自殺統計を調べ、新聞の一面に自殺報道が載せられた地域では、その後二か月間は自殺者の数が平均よりも58人増えることを見出しました。

 また新聞が若い人の自殺を詳しく報道するとその後、事故で無くなったドライバーは若い人が多くなり逆に、高齢者の自殺を報じた場合、高齢者ドライバーが事故で亡くなる割が増加しています。(4)

 その他に驚くべきことが2点あります。

 1点目は1人の自殺なら単独の事故が増え、集団自殺なら他人を巻き込んだ事故が増えるということ。

 2点目は、死ぬまでの時間が自殺の報道前比べて、1/4にまで早まっているという点でした。(4)

 さらにフィリップスは、ボクシングの試合で「黒人」が負けると、試合後の10日間は黒人が殺される事件が増加し、「白人」が負けた場合には、その逆の現象が起きていることも発見しています。(5)

 この「ウェルテル効果」は、ある有名人が自殺して、そのファン達が「後追い自殺」をしてしまうという不可解な出来事を、説明するのにも役立ちます。

 1人のファンによる後追い自殺が、他のファンも巻き込んで一緒に自殺させてしまうという、これも「悪しき社会的証明」の一つの好例です。

  メディア報道と自殺の関係を調べた2020年の論文では、有名人の自殺を報道すると一般人の自殺率が8〜18%増加し、その人物が世界的に著名であるほど自殺率も高くなりました。(6)

 さらに注目するべきは、自殺以外の事件がニュースで大々的に取り上げると、類似した事件が多発するかもしれないということです。

 よくよくテレビを見ていると、何かしらの事件を報じた次の日も、また同じような事件が発生していることに気がつくでしょう。

 マスメディアが流す情報も、誤った社会的証明を促す可能性が高いので注意してテレビを視聴する事をオススメします。

 

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終わりに

 

 全体的にあまり良い話ではありませんが、社会的証明の良い面と悪い面を見て頂きました。

 社会的証明の怖い所は、無意識的に私達に影響を及ぼしているところです。

 テレビやネットニュースなどを見るな!というワケではありませんが、今回お話した内容を思い出しながら情報収集に役立てて頂ければ幸いです。

 


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参考文献

 

限りなく黒に近いグレーな心理術(青春出版社,2015年)

・影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか(誠信書房,2014年)

・(1) Lun, J., Sinclair, S., Whitchurch, E. R., & Glenn, C. (2007). (Why) do I think what you think? Epistemic social tuning and implicit prejudice. Journal of Personal- ity and Social Psychology, 93, 957–972.

・(2) Bandura, A., & Menlove, F. L. (1968). Factors determining vicarious extinction of avoidance behavior through symbolic modeling. Journal of Personality and Social Psychology, 8, 99-108.

・(3) Phillips, D. P. (1974). The influence of suggestion on suicide: Substantive and theoretical implications of the Werther effect. American Sociological Review, 39, 340-354.

・(4) Phillips, D. P. (1980). Airplane accidents, murder, and the mass media: Towards a theory of imitation and suggestion. Social Forces, 58, 1001–1024.

・(5) Phillips, D. P. (1983). The impact of mass media violence on U. S. homicides. American Sociological Review, 48, 560-568.

 ・(6)https://www.bmj.com/content/368/bmj.m575