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なぜ人はそれを選ぶのか?「選択の科学」

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高い物は本当に良い物だろうか?

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 あるケーブルテレビの番組が二人のマジシャンコンビを使って、ミネラルウォーター産業を取り上げました。(1)

 彼らが街の通行人に、どちらか分からないように「ミネラルウォーター」と「水道水」を飲んでもらうと、75%の人が「水道水」を美味しいと答えたのです。

 他にもカリフォルニア大学とスタンフォード大学では、ワイン初心者に5ドル~90ドルまでの5種類のワインを試飲してもらう実験を行いました。(2)

 最初に見隠しで試飲をすると、大体どのワインも同じような感想ですが、最初に値段の高いワインを見せられてから飲むと、それが嘘の価格であっても試飲時に高い評価をすることが分かったのです。

 さらに、ある研究では医療薬品を服用している800人を調べると、鎮痛効果の1/3は「ブランドの薬を飲んだ」という、単なる思い込みによるものだという結果も出ています。(3)

 この一連の話は、人間が外部の情報にどれほどの判断基準を置いているのかが分かる話でもあるのです。

 「安かろう悪かろう」という意識がまだまだ人々の頭の中に蔓延ている昨今ですが、逆を言えば余りにもブランドを神格化し過ぎているとも考えられます。

 確かに高価な物はそれだけ良い物という事もありますが、世の中には高い値段というだけで、例えば水道水をペットボトルにつめて高額に販売する人もいます。

 安い物ならば騙されても小さな選択ミスですみますが、それが高額になるほど手痛い判断ミスになってきます。

 「値段が高いから良い物だ」というのはある種の思考放棄であり、冷静に考えれば安くて良い物はいくらでもあります。

 だからこそ重要になるのは、「安いか高いか」ではなく本当に効果があるのかという事を立ち止まって考えなければ行けないところです。

 

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政治家を政策以外で選ぶ理由

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 自分の地域や国を代表する政治家を、まさか顔だけという理由で投票するなんて人はいないと考えているかもしれません。

 しかし、過去の研究では意外にも外見という武器が言葉に勝る可能性も示唆されています。

 例えば、1974年のカナダ国政選挙に関する古典的な研究では、最も魅力的な候補者たちの得票数では、最も魅力の薄い候補者の二倍に上りました。

 また2007年に行われた研究で、協力者に選挙の候補者の写真を見せて、有能そうにみえる候補者を選んでもらったところ、実際に当選者の70%を当てる事が出来ています。(4)

 世の中の大多数は、政治について細かく理解し反応している訳ではなく、候補者が何を言っているのか理解すらしていない人もいるでしょう。

 だからこそ、投票所に行った時に「どのようにして候補者を選べば良いのか?」と言う問題を解決する一つの判断材料として、相手の外見で決めることがあるのです。

 2011年にロンドン大学が行った研究でも、イケメン又は美女であると頭も良い可能性があることを示唆しました。(5)

 そう考えれば、何も分からない有権者たちがその場の勢いで、顔立ちの整った人に投票してしまうのは理解できると思います。

 顔が良ければそれだけ頭も良く、それだけ正しい判断が出来ると直感的には思えるからです。

 もちろん、現実で考えればそんな旨い話は中々ありませんが、自分が有権者として投票する時に「なぜこの人に私は投票をするのだろうか?」と考えてみると、意外と大した理由がないこともあります。

 

多い物の中から選ぶ

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 ところで皆さんはジャムの実験をご存じだろうか?

 アイアンガーと同僚の社会学者のマーク・レバーが行った研究で、選択肢が多すぎると逆効果になる現象を調べましたものです。(6)

 

 彼らは買い物客が同一メーカーの色々なジャムを試食できるように、高級スーパーの二か所で試食コーナーを設置しました。

 一方には6種類のジャム、もう一方には24種類のジャムを配置してその売り上げを見ると大きな違いが見られました。

 選択肢が豊富な方のコーナーでは立ち寄った人の3%にしか購入されないのに対して、選択肢が少ない方のコーナーでは、30%もの人が購入したのです。

 

 研究者の見解だと、選択肢があまりにも多いせいで消費者にとってはそれぞれを差別化する負担が大きくなり、決断を下すのが煩わしくなってしまうようですね。

 そうなると「まぁ、いつものジャムでいいや」という風になるのが関の山。

 この事態に海外のメーカーである、プロクター・アンド・ギャンブルは洗剤から処方薬まで取り揃えている会社ですが、26種類あった売れ筋商品を15種類に減らしたところ、短期間でなんと10%の売り上げアップに繋げました。(7)

 多い選択肢から自由に選べると言うのは、非常に重要な要素だと直感でも理解できます。

 一つの選択肢しか与えられず、他の選択はまったく選べない状況ほど最悪な状況はありません。

 しかしそうは言っても、商品の色や形、性能から付属品に至るまで大した差がなにも関わらず、膨大な選択肢を消費者に与え過ぎています。

 ミネラルウォーターが、何十種類も棚に陳列されている場面を想像して頂けると、理解しやすいかもしれません

 では、そういった状況に甘んじて生きて行かなければならないのでしょうか?

 そんなことはありません。

 一つの方法として、例えば専門知識を持つことが挙げられます。

 ある車を見た時に、素人では「車」として捉えるかもしれませんが、マニアは「スポーツカー」と分類するかもしれません。

 技術者のレベルなると「V12型エンジンを搭載したフェラーリ・エンツォ」と言った細部まで判断する事が可能になります。

 もちろん、一つの専門知識が他の分野で応用できる可能性は少なく、判断のたびに専門知識を身に付けるのは至難の業です。

 しかし、ある特定の専門知識を持つことは、多い選択肢の中から選ぶ一つの方法として十分に使えるという事は分かりますね。

 

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専門家や集団の知恵

 

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 多数の選択肢から選ぶ別の方法は、ワインを販売する専門店などがよくやっている「ベストセラーズ」と呼ばれる、多数のワインの中から選ばれたオススメ商品をピックアップしてくれる方法を活用することです。

 例えば100種類以上のワインが存在する中で、素人が味を吟味して選ぶの難しいでしょう。

 それならば、実績のある専門家が選んだ「選りすぐりの10本」の中から判断すれば美味いワインに出会う可能性は高くなります。

 また、よくネットフリックスやアマゾンが活用している、おススメの商品の紹介も判断基準として有効です。

 多くの人がクリックしたり、実際に購入している商品は優れている可能性があります。

 例えば、膨大な量の書籍から漠然と本を選ぶよりかは、よく買われている商品や人気ランキングのトップを飾る書籍を選んだ方が良い時もあります。

 もちろん、全ての判断に活用できるとまでは言い切れませんが、判断材料を提供する意味として選択肢を与えるだけでなく企業側のアプローチも重要になってくる思います。

 選択は少ない方が良いと言われると、人は直感的に抵抗することがあります。

 これを心理的リアクタンスと呼び(8)、「何かしら制限を掛けられる」と人はむしろ、それを進んで行ってしまうというやっかいな心理効果があります。

 また、多くの人は往々にして自分で選べた方が、その分だけ満足度も高く後悔も少ないだろうと考えたりします。

 しかし実際は、選択肢がある程度絞られている方が、私達は良い決断をする事が出来るし判断疲れも少なくて済むことの方が多いと分かると思います。

 

終わりに

 

 どんな選択が絶対正しいのかは分かりませんが、少なくとも何かを決める時に、「自分はなぜそれを選んだのか」という事を立ち止まって考えてみると、よりよい判断が出来るかもしれませんね。

 


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参考文献

 

MIND OVER MONEY―――193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実(あさ出版,2017年)

・ 選択の科学 (文藝春秋,2010年)

・(1)http://abcnews.go.com/GMA/story?id=126984&page=l.

・(2) Plassmann, H., ODoherty, J., Shiv, B., and Rangel, A. "Marketing actions can modulate neural representations of experienced pleasantness." Proceedings of the National Academy of Sciences 105 (3) (2008): 1050-1054.

・(3) Branthwaite, A. & Cooper, P. (1981) Analgesic Effects of Branding in Treatment of Headaches. British Medical Jouranl, 282, 1576-1578.

・(4) Ballew, C. C., and Todorov, A. "Predicting political elections from rapid and unreflective face judgments." Proceedings of the National Academy of Sciences 104 (46) (2007): 17948-17953.

・Judge. T. A., and Cable, D. M. "The effect of physical height on workplace success and income: Preliminary test of a theoretical model." Journal of Applied Psychology 89 (3) (2004) 428-441.

・(5)Kanazawa, S. (2011). Intelligence and physical attractiveness. Intelligence, 39, 7–14.

・(6) Iyengar, S.S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing? Journal of Personality and Social Psychology, 79, 995-1006.

・(7)Osnos, E. (1997). Too many choices? Firms cut back on new products. Philadelphia Inquirer, 27 September, pp. D1, D7.

・(8) Brehm, J. W. (1966). A theory of psychological reactance. New York: Academic Press.

Burgoon, M., Alvaro, E., Grandpre, J., & Voulodakis, M. (2002). Revisiting the theory of psychological reactance. In J. P. Dillard and M. Pfau (Eds.), The bersua- sion handbook: Theory and practice (pp. 213-232). Thousand Oaks, CA: Sage.