先頭を切って走り出した者が必ずしも最終的な勝者になるとは限らないのである。
by キャロル・S・ドゥエック
【著者・書籍情報】
著者:キャロル・S・ドゥエック
スタンフォード大学心理学教授。パーソナリティ、社会心理学、発達心理学における世界的な権威。
イエール大学で心理学博士号(Ph.D)を取得後、コロンビア大学、ハーバード大学で教鞭を執り、現在に至る。
人間の思考様式への関心は30年来で、モチベーション、人間関係、メンタルヘルスに関する研究で大きな業績をあげてきた。
書籍【MINDSETマインドセット「やればできる!」の研究】
発売日2016/1/15
困難に挑み成功に向けて地道に努力して行ける子どもと、能力はあるが努力をしない子どもがなぜ将来に渡って人生成功に左右してしまうのかを、本の中で馴染みのある各界の有名な人たちを例に使い紹介している。
どんな人にお勧めか?
「人の生まれついた能力は変わらないんだ!」
「出来ない事を挑戦や努力するなんて無駄だ」
と考えている人にオススメだ。
本書の中に登場する人たちは、どれもこれも才能に溢れている。
しかし、その多くは困難に挑戦しようとするまえに諦めてしまう人が多い。
逆に何年も下積み時代を送りながら最後には成功した話を何人も聞くことができるので、一度見てみるのも良いだろう。
しなやかマインドか硬直マインドか?
人間の思考を大きく分ければ、「しなやかマインドセット」か「硬直マインドセット」に大別できる。
しなやかマインドセットとは、才能は変化するモノだから努力を重ねれば、自分にとって良い方向へ進化させることが可能だと考えている思考を指す。
硬直マインドセットは、才能は生まれてから固定的なモノで努力や挑戦で変わる事はない、と考えている思考を指す。
思うに、多くの人は後者の硬直マインドセットの思考を持っているだろう。
学校でも会社でも、出来る奴を見て「あいつは天才だからな」と考えて、自分は特に何かするわけでもない。
そんな経験は無いだろうか?
これがしなやかマインドセットの人ならば、「あいつは凄いな、俺も頑張らないと!」と考えて、行動に移す。
実際に能力が向上するかは分からないが、少なくとも0ではないことが理解できる。
硬直マインドセットの問題
硬直マインドセットの多くは自分の能力を褒められたがる。他者の目にどれだけ「カッコイイ」や「賢い」自分が映るのかを気にする。
だからと言って、そうなるように努力する訳ではない。
彼らは努力を無駄だと考えている。
努力は才能の無い奴が必死こいて頑張る為にあるのだからと。
「そんな風に考えたことない」と思っているようだが、なら今何かに向かって努力しているか?
と聞かれれば大抵「うーん」言わざる負えない。
大した努力が必要のないレベルでは完璧かつ迅速に問題を対処するが、大きな困難を目の前にすると途端にやる気をなくす。
これはあらゆるジャンルで言えて、例えばゲームでも見られる事だ。
低レベル帯では天下無双の強者であるが、一段レベルが上がれば足軽兵に急転落する。
それが嫌だから今のレベルを維持して、自分が成長するより現状維持に力を入れるのだ。
成長で無く成功を、失敗で無く敗北を恐れる。
しなやかマインドセットは成功する
しなやかマインドセットの人は、あらゆる困難い果敢に挑戦する。
しかし、単に挑戦するだけに留まらず現状の能力を把握する力に長ける。
それはなぜか?
自己の成長を知るには現在の力を知らずして判断することは出来ない。
「何となく成長したな」ではなく、確実にフィードバックが手に入る方法を探す。
学校ならばテストだろうし、ゲームなら対戦成績やスコアだろう。
どんなに悪い結果でもそれ受け入れて、改善と努力の道を探す。
ハッキリ言って、努力をすれば必ず報われる何というものはない。
マインドセットとは単なる思考であって、人生必勝法ではない。
どんなに努力しても、身分や貧富の格差があればチャンスを逃す事だってザラにあるだろう。
だから「努力しない」とないらないのが彼らだ。
一度テストで失敗した程度や会社の就職面接に落ちた程度ではヘコタレない。
常に努力を続けて、自分のチャンスを見逃さないようにしている。
しかし硬直マインドセットの人は、全力を嫌う。
失敗した時に言い訳が出来ないからだ。誰のせいにもできない状況を嫌う。
しなやかマインドセットの人は、失敗しようとしまいと関係ない。
自分が前より成長したなら成功なのだ。
二つのマインドセットを持つ
私達の多くは、どちらか一つのマインドセットを持っている訳ではない。
例えば、英語は得意で進んで難しい問題にも挑戦するが、数学は逆に簡単な問題ばかり解いてそれ以上深めようとしない。
分野によっても、しなやかだったり硬直だったりする。
これは誰にでも当てはまるし、100%しなやかマインドセットを持つのは不可能だと考えられる。
だが、常にしなやかマインドセットを持てるように心がけて置くのは非常に大切なことだ。
スポーツの成功者に必要なモノ
スポーツにおいて最も必要なのは、地道な努力とここぞと言う時に普段の何倍もの成果を出せる精神力を持ち合わせる人間だ。
大抵ニュースや新聞で一面を飾るような人は、単純な才能だけで成果を出している訳でない。
今もどこかしらで必死にトレーニングを積んでいるだろう。
出なければ、どんなに幼い時から始めようと「ちょっと他の人よりうまい人」で終わってしまう。
そしてスポーツ業界には何年も下積みを余儀なくされた人は多い、だがそこで才能がないと諦めずに努力して成功した人も多い。
本書の中では、そこまで有名で無いが全くの無名だったことに比べて、チャンスをつかんで成功した人たちをいくつも挙げていた。
そして何より重要な事だが、自分一人で何かを成し遂げるスポーツは存在しないと言う事。
どこかしらで誰かに助けてもらっている。
硬直マインドセットの人は、チームスポーツでも一個人として考えているがしなやかマインドセットの人はチームの一人として考えている。
親や教師が硬直マインドセットだと弊害しかない
硬直マインドセットの人は自分を褒めて欲しい、つまり自己顕示欲が強い。
それが親となれば、意識は自分から子どもに移る。
つまり、良い大学や良い仕事に就くことで自分達の有能さを周囲に知らしめたいという欲求に駆られる。
だから、子どもには特別手をかける。これ自体は問題ない。
しかし、人生成功だけの人間はいない。必ず失敗するし挫折することも多々ある。
例えば、東大に子どもが必死の勉強をした末に落ちたとしよう。
硬直マインドセットの親は、その時点で子どもに興味を無くす。
彼らが愛しているのは「東大に入学した子」であって「努力した子」ではない。
さらに言えば、大学入学後に何を学ぶか、どう成長するかは毛ほども興味が無い。
全ては自分達の評価を上げてくれる子ども、それだけなのだ。
こんな親の元で育つ子どもまた、硬直マインドセットに囚われてしまう。
両親の興味を損なわないように、難しいことではなく簡単なことをこなして有能さをアピールする。
それだけに10代を費やした人は多いとは言わないが少なくないだろう。
硬直マインドセットの子どもが辿る道が楽な道であっても成功できる道ではない事は、疑いようのないことだ。
そしてさらに言えば、教師も硬直マインドセットとしなやかマインドセットの人に分かれる。
硬直マインドセットの教師は、才能のない子どもに教えるのは浪費と考えて簡単なことばかりやらせて成長さようとしない。
しなやかマインドセットの教師は、人は努力や困難を通して才能を伸ばせると考えている為、難しい問題にも挑戦させるし、間違えたらフィードバックも返す。
そして、常に人は努力で変わる事を示し続ける。
そんな教師の元で学べば、例えて他の子どもと知能で遅れをとっていようとも挽回のチャンスはいくら転がってくる。
本書では、あるしなやかマインドセットの教師を挙げてどのように他より劣った子どもが、何倍も成長して行ったのかが書いてある。
書籍を読んだ感想
本書を読んでいると、今まで自分がどれだけ硬直マインドセットの人間だったのかを痛感させられる。
様々な人物の例を通して、しなやかマインドセットがいかに人生において重要な思考であるかを教えてくれた。
もちろん再度言うが、しなやかマインドセットをもったから成功する訳ではない。
しかし、何かに取り組んで例え失敗しても、次は成功すると考えて改善と努力に動けるのは必要なことだろう。
本の中でも語られていたが、マインドセットを変えるのは容易な事ではない。
根底から変える必要があるし、一度しなやかマインドセットになったからと言って気を緩めれば、すぐに硬直マインドセットのに逆戻りしてしまう。
マインドセットを変える方法もいくつかは教えてくれた。
しなやかマインドセットに転換する、難しいが変わるだけの価値があると思う。
終わりに
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