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イギリス国税庁も採用する大衆説得する心理学

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国税庁が納期を守らせた方法

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 説得術に関する書籍は数あれど、実際に国が使っている説得方法はかなり珍しいでしょう。

 イギリス国税庁(HMRC)は、確定申告を提出しない人や税金を滞納する人が多い国の1つです。

 利息の負担・延滞料の発生・法的措置など様々な方法で、滞納者に納期を守らせようと奔走しましたが、殆ど効果がありませんでした。

 そこで今までのやり方に1つだけ工夫を加えました。

 それが社会的証明です。

 社会的証明とは「人間の行動は大部分において周囲の人間によって決定されている」というものです。

 単刀直入に言いましょう、「あなた以外の多くの人は規則を守っている」というメッセージを伝えるだけで、多くの人が行動を変えたのです。

 人は周りから「規則を守るちゃんとした人間」だと思われたい傾向があります。そこを上手く利用した方法だと言えますね。

 そしてこの傾向は様々な研究からも明らかになっており、人は基本時に3つの欲求で行動を決定しています。

  1. 効率的に正しい行動を判断した欲求
  2. 他者と繋がったり承認されたい欲求
  3. 自分を肯定的に捉えたい欲求

 以上の3つを満たすことが出来れば、人を簡単に動かすことが可能です。

 イギリス国税庁は、今まで通りに「滞納はいかに利息による負担が大きくなるか」に加えて、「国民の何%がちゃんと税金を納めているのか、さらに数%の滞納者によって、どれだけ多くの国民が迷惑しているのか」を訴える一文を追加で載せました。

 すると翌年、以前よりも税金を納税する人が急増したのです。

 正確には、前年よりも1兆円も多く回収出来ました。(さらに赤字も3600億円ほど減りました)

 たった一文を加えただけで、これだけの改善を見せたのは社会的証明のなせる業と言えます。

 これは国家単位の話ですが、例えば普段の仕事上においても、遅刻や期日を守れない人に対して

 「周りの社員は遅刻をしないのに、一部の人が遅刻するせいで仕事に支障が出ている」

 みたいな内容をメールや会議で伝える事によって、本人に直接伝えなくても社会的証明の効果を活かすことが出来ます。

 

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オバマ元大統領も選挙で利用した方法

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 社会的証明について話は、まだまだ続きます。

 イギリス国税庁の例は、いかに「周りの人間と自分の行動に違いがあるのか」を強調して民衆を説得しました。

 次はその逆で、「いかに周りの人間と自分が近い存在か」の類似性を強調した社会的証明の実例を紹介します。

 どこの国でも選挙に行かない人の対処に明け暮れるのは共通で、2012年にアメリカ大統領の選挙組織である「オバマ・フォー・アメリカ」では、電子メールを駆使して注目すべき作戦を行いました。

 それは、自分たちのサイトに登録されている有権者に、自分と同じ名前の人が何人くらい期日前投票を行ったを見えるようにしました。

 文面のメールが届き、それをクリックすると

 「こんにちは、スティーブさん。面白い情報がありまして、あなた以外のスティーブが何人、すでに投票を済ませたのかがサイトで正確に分かります!」

 というメッセージと一緒にURLが貼ってあり、閲覧した人にはそのリンクを別の人に紹介できるようになっていました。

 自分の同じ名前の人が既に投票を終えていると言われると、何となく自分も投票に行った方が良い気がしてきませんか?

 そこを上手く利用した戦略ですね。

 さらに、その結果オバマ大統領はアメリカ大統領選挙で勝利を納められています。

 また人は所属している集団と同じように行動したいと思う傾向もあります。

 例えば、応援しているサッカーチームのファン達が、みんな共通のリストバンドを付けていれば、同じファンの一人である自分も同じ物を所有したくなるでしょう。

 このような傾向を活かすには、IPアドレスなどを利用して「このwebサイトを訪問した東京都の○○%が自社の豪華版パッケージを購入しました!」

 みたいな伝え方をするだけで、より顧客の購買意欲を誘う事が出来ます。

 他にも「土地」・「所属するグループ」・「民族的」な要素でも良いですが、より具体的に相手のカテゴリーを明確にして伝える事が出来れば、より顧客の心へと深く突き刺さるようになります。

 

社会的証明の落とし穴?

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 ここまでは、社会的証明の善の部分を話していましたが、実のところ使い方を間違えると逆効果になる場合もあります。

 ある研究では、社会的証明のネガティブ効果を調べる為に、研究チームが「化石の森国立公園」から木が盗まれてしまうのを防ぐために看板を立てました。

・「これまでに公園を訪れた多くの人が化石木を持ち出した為に、森の環境が変わってしましました」

・「公園から化石木を持ちだすのを止めてください。化石の森を守るためです」

・ 何もしない

 そして来訪者に知られないように、意図的に化石をばら撒いてその様子を伺いました。

 さて、この三つの内どれが化石を多く盗ませたでしょうか

 なんと三番目以外の看板では、全て盗まれる確率が上がっていたのです。

 皮肉にもネガティブな社会的証明(化石を持ち出す人が多い)を強調した看板では、そうでない看板よりも盗まれる確率が3倍も上がっていました。

 さらに、この傾向は2012年に実施された別の研究でも確認され、保健所が前月の診査予約をすっぽかした件数を目立つところに貼り出したら、翌月にはさらに診査予約をすっぽかした件数が上昇しました。

 これは看板を見た人が「こんなに多くの人がやっているなら、一人くらい増えても構わんだろ」と考えたためです。

 このように、悪い部分だけを強調してしまうと「それだけやっている人がいるなら、俺(私)もやろうかな」という考えにさせてしまいかねません。

 あくまでも強調する部分は良い部分に止めておきましょう。

 

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終わり

 イギリス国税庁やオバマ元大統領も利用した社会的証明を、上手く現実の仕事場で利用できれば、かなりの効果を見込めると思います。

 

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参考文献

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