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生後10ヶ月で信頼する
そもそも、子どもは生まれてから間もなく経つと、信頼について理解を始めます。
例えば、ポール・ブルームとカレン・ウィンたちは、生後10ヶ月の赤ん坊を対象に「赤ちゃんが見つめる時間の長さ」を使ってある実験を行いました。
緩やかに起伏する丘で、右手から「登山者」と呼ばれる人形が上がってきました。自力では丘の頂上に到達することが出来ないのですが、そこに別の人形が現れます。
新しい人形には「協力者」と「妨害者」という二パターンの役割があり、登頂を助けるか妨害するかの、どちらかの行動を行います。
さらに三体目の人形が劇に登場すると、「協力者」に近づくか、「妨害者」に近づくかの二つの選択肢を与えられました。
すると、赤ん坊は三体目の人形が「協力者」に近づくと、考えるまでもなく当たり前だと感じて、余り長くは見つめませんでした。
しかし、三体目の人形が「妨害者」に近づくと赤ん坊は、信じられないと言った表情でその場面を遥かに長く見詰めていたのです。
さらに、同じ実験を生後6ヶ月の赤んぼでも同様の結果が得られました。(1)
このように生まれて間もない赤ちゃんですら、どちらの操り人形が信頼でき、交流するべきかを正確に理解していました。
つまり、人間が生まれてから最初に学ぶモノの中には「相手の信頼を見極める」というのが、早々にランクインしているという事が示唆されます。
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教師は親密より能力
一般的な教師に必要なスキルは、教える生徒との親密な関係は重要なモノにも感じられますが、どうやらそうでは無いようです。
ポール・ハリスは子ども達を集めて、ある実験を行いました。(2)
集めた子どもに、実験開始の10分前になったころ面識のない二人の人間を紹介した。その後、子ども達には見慣れた物(歯ブラシとかタオル)の名前を二人が答えている映像を見せる。
片方の人は、常に正しい名前を答えるのだが、もう片方の人は常に間違った名前を答える。
それから、子ども達には目の前に未知の物体が差し出され、どの人物にその物体の名称を尋ねるか、考える時間が与えられた。
すると、ビデオで正しい名称を答えられた人に質問した回数は、間違えた名称を答えた人に質問した回数の3倍も多いのでした。
この傾向は、初対面の人にだけ当てはまるのではなく、通園している幼稚園を対象にした実験でも同様の結果が出ています。(3)
親しい保育士が、事前にある物の名称を意図的に間違って答える場面を見せた場合には、それほど親しくない保育士に質問する回数が、そうでない時に比べて多かったのです。
つまり、幼い頃から子ども達は、見慣れた顔なじみの大人から学ぶのではなく、能力がある大人から様々な知識を学ぶということが判明しました。
また、全く見たことなく「知性も親密もない大人」が二人もいた場合には、自分に似ている特徴を持つ(出身地が同じだとか方言が同じだとか)人を頼る傾向がありました。(4)
そして信頼する人から教わった場合には、そうで無い時に比べて同じ情報でも記憶の定着率に差が出るという研究もあります。(5)
ここから分かるのは、学校の授業カリキュラムの改善にばかり目を向けるのではなく、教師一人一人が生徒との類似性や適切な能力を示し方を学ばないと、生徒は信頼してくれないという事です。
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終わりに
昨今、生徒に教える教師の負荷はかなり大きなと感じます。なかなか勉強を理解してくれなかったり、分からない事を相談しくれなかったりと問題は色々あると思いますが、こと勉強に関しては如何に信頼関係を構築できるかが大きなカギとなる事を覚えておく必要があります。
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参考文献
・(1)Hamlin, J., Wynn, K., and Bloom, P. (2007.) “Social judgment by preverbal infants." Nature 450: 557-559.
・(2)Corriveau, K. H., Harris, P. L., et al. (2009.) "Young children's trust in their mother's claims: Longitudinal links with attachment security in infancy." Child Development 80: 750-761.
・(3)Corriveau and Harris, "Choosing your informant," 2009.
・(4)Kinzler, K. D., Corriveau, K. H., and Harris, P. L. (2010.) "Children's selective trust in native accented speakers." Developmental Science 14: 106-111.
・(5)Sabbagh, M. A., and Shafman, D. (2009.) “How children block learning from ignorant speakers." Cognition 112: 415-422.