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楽観的なのは偏った見方をしているだけなんじゃね?バイアスの科学

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気質は生まれつきか?偏りか?

 

 例えば、楽観的な人は物事を深く考えずに少々お気楽な思考を持っている、なんて考える人がいるかもしれません。

 ところが実際、楽観的な思考を持つ人の方が行動的でさらに健康的でもあります。だからと言って、悲観的な思考を持つ人間が急に楽観的な思考に切り替えるのは簡単に変える事は至難の業でしょう。

 しかし、必ずしも楽観的な物の見方は生まれつきだけでは無く、考え方や思考の偏りだという事も分かっているのです。今回は、思考の偏り(バイアス)が如何にして人生を左右しているのかという話をしてきます。

 

何に注目するべきか?

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 いわゆる楽観的な人は、どうして積極的行動出来て、さらに幸福度が高いのかという事を考えてみると、そこにはバイアス(思考の偏り)が見えてきます。
 「選択的注意」または「注意バイアス」とも呼ばれるものは、イギリス心理学者エドワード・チェリーが1953年に発見した(1)「カクテルパーティー効果」と言う、人が入り混じる混雑した部屋の中で、自分の名前だけには即座に反応できるという結果からも存在を確認できました。
 注意バイアスのおかげで、楽観的な人は物事の明るい面に視点を向け、悲観的な人は暗い面に視点を向けやすくなります。
 昔から、不安症の人は悪いニュースばかりに目が行くから不安になり、楽観的な人は良いニュースも悪いニュースも両方に重きを置いているから、感情が安定していると考えられていました。
 ところが実際、不安症でない人(ポジティブな人)はネガティブな情報を避けるというバイアスがあるとう言う事実が、研究を重ねるごとに分かって来たのです(2)。
 つまり、楽観的であることもバイアスが関連し、悲観的であることもバイアスが関わっていたということです。

 

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性格で記憶すらも変わる

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 スタンフォード大学の心理学者ゴードン・バウアーは1980年代(3)の実験から、人が幸せな気分の時にはポジティブな出来事を記憶するのに対して、悲しい気分の時はネガティブな出来事を記憶する事を発見しました。
 ここから分かるのは、普段の自分が持つ価値観や世界観によって、起きた出来事がそっくりそのまま脳に記憶されるのではなく、ある程度は取捨選択されてそれぞれの望む記憶だけが保存されるという事実です。
 悲観的な人はよりネガティブな記憶ばかりを覚え、楽観的な人は楽しい出来事を頻繁に記憶します。
 そして、例えば幸せな記憶はポジティブな気持ちを感じさせます。受験に合格したとか、結婚したとか、そういった記憶が本人の心の中でプラスになるのは明白。
 よく言う「卵が先かニワトリが先か」という問題で、良い記憶は良い気分になり、良い気分は良い記憶を形成するのです。

 

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信念に作用する

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 「確証バイアス」と呼ばれるものは、自分に有利な情報だけを無意識的に集めてしますバイアスです。(4)
 例えば、「女性は頭が悪い」と言うバイアスがあれば、女性がミスをしたという情報ばかりに目が行ってしまう。
 心理学者マーク・スナイダーは、多くの信念が自己充足な予言になると確認しました。
 初対面の人に会う際、その相手が神経質だと言う話を事前に聞かされていた場合には、その人が行動する一挙手一投足、すべてが心配性な人間の行動に見えるでしょう。
 実際、二人一組ペアを組ませて何人かには「ペアを組んだ相手が外向的な性格かどうか」を判断するように指示し、また何人かには「相手が内向的かどうか」を判断するように指示しました。
 すると「パーティーを盛り上げるために貴方は何をしますか?」や「もっと社交的になりたいと思うときはありますか?」などと言った、質問を参加者は多用する傾向があった。
 実際、これだけでは、到底相手が外交的かどうかは分からない。

 しかし、事前に判断基準が設けられてしまうと、どうしても偏った質問をしがちだったのである。

 

その思い込みが健康を左右する

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 皆さんは「プラシーボ効果」をご存じだろうか?
 例えば、風邪薬と偽って単なる偽薬(小麦を固めたような奴)を飲ませると、本当に風邪が治ってしまうのは、このプラシーボ効果のおかげである。
 しかし、あまりご存知だいかもしれないが、プラシーボの他に「ノーシーボ効果」と呼ばれる兄弟が存在します。
 端的に言えば、この薬を飲むと体が痛くなるという風に偽薬を貰って飲んだ場合、ほんとに体が痛くなってしまうときなどが代表例である。
 ミシガン大学アナーバ校の分子神経科学者・行動神経科学のジョン・カー・ズビエタたちは思い込みが脳に直接的な影響を与える事を実験で見つけた(5)。
 20人の健康的な被験者を、20分間痛みを我慢する実験に参加させる。
 一部の被験者には「強い鎮痛薬」を与えたが、実際には砂糖を固めた物であった。その後、「鎮痛薬を飲んだ」と思い込んだ人々の脳内では「ハッピー・ケミカル」と呼ばれるドーパミンやオピオイドが急増していた。
 「ノーシーボ効果」の場合には、逆にドーパミンやオピオイドの減少が確認されたのだ。
 これは思い込みによって脳の快楽の領域に変化を及ぼすことが示されたと言う事。
 自分がガンに罹ったと考える人は、それが実際に嘘だったとしても本当に体が衰弱して早死にするケースがある。
 思い込みとは、人を生かすことも殺すことも出来るのだ。
 不幸or幸福であるという思い込みが、バイアスを招き本当にその通りの動きしかできなくなってしまうこともあるということが分かる。

 

終わりに


 楽観的であるというのは生来の気質と捉える人がいる。もちろん、それは正しい部分もあるがバイアスによって自分自身の物見方が曲がっている可能性ある。
プラシーボが働くか、ノーシーボが働くかは、世の中をどう見るかによっても大きく変わってくるである。

 

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www.ryousyototatiyomi.com

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参考文献

 

脳科学は人格を変えられるか? (文春文庫) (日本語) 文庫 – 2017/8/4

・(1)E.C. Cherry, 'Some Experiments on the Recognition of Speech with One and Two Ears,' Journal of the Acoustical Society of America 25 (1953): 975-979. 

・(2)Elaine Fox, 'Allocation of Visual Attention and Anxiety," Cognition & Emotion 7 (1993): 207-215.

・Colin MacLeod and Andrew Mathews, 'Anxiety and the Allocation of Attention to Threat,' Quarterly Journal of Experimental Psychology 40A (1988): 653-670.

・(3)H. Bower, "Mood and Memory,' American Psychologist 36(1981): 129-148

・G. H. Bower and P. R. Cohen, "Emotional Influences in Memory and Thinking: Data and Theory,' in Affect and Cognition, ed. M. S. Clark and S. T. Fiske (Hillsdale, NJ: Erlbaum, 1982), 291- B. Interaction,' Journal of Personality and Social Paychotogy 36 (1978):1202-1212.

・(4)Snyder and W. B. Swann, 'Hypothesis Testing Processes in Social Interaction,' Journal of Personality and Social Psychology 36 (1978): 1202-1212.

・(5)David J. Scott et al., 'Placebo and Nocebo Effects Are Defined by Opposite Opioid and Dopaminergic Responses,' Archives of General Psychiatry 65, no. 2 (2008): 220– 231.  

・Rebecca Voelker, 'Nocebos Contribute to a Host of Ills,' Journal of the American Medical Association 275, no. 5 (1996): 345- 347.