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生計を立てなければならない
まず仕事をやめられない最大の理由は、言うまでもなく経済的な必要性だ。
親から潤沢な遺産でも受け継がない限り、大抵の人は働いて生計を立てなければならない。
高齢の親や病気の子どもを抱えている等々、過酷で健康に悪くても給料のいい仕事をやめれない理由は沢山ある。
そのうえ、一部の企業は合理的な理由から、製造や物流などの拠点を選ぶことがある。
例えば、Amazon.comだ。
Amazonは、大きな工場が閉鎖された地域で新しい倉庫を建設するケースが多い。
なぜなら大勢の労働者が解雇されて、供給過剰になっているため、とにかく賃金が貰えれば何でもやりますと言う人が多いからだ。
そして近年Amazon.comはテネシー州、サウスカロライナ州(どちらとも、被雇用者の年間所得が全米を下回る)に拠点を置く傾向があるとされている。
また「過酷な労働条件を受け入れる労働者が容易に見つかる」という基準で立地を決めるのは、Amazonだけではない。
労働者が供給過剰で失業率が高い地域とは、つまりは低賃金で劣悪な労働環境を我慢する人が多い地域であり、企業にとっては甚だ魅力的だ
さらに、企業が倒産したり閉鎖した後に何かを建設する場合には、低利で融資を受けられたり、地域自治組織から土地や建物を無料で提供されるケースもある。
現にAmazonが流通センターを新設したテネシー州チャタヌーガでは、土地は無償提供され、固定資産税は通常の73%引きという大幅な優遇措置受けている。
このように、景気が悪くなると失業者が増え、人々はとにかくお金が欲しくなる。雇ってくれるのが有名企業なら履歴書に箔がつくから結構だ
例え、そこが劣悪な環境でも行く当てのない人は、そこで働くしかない。
そう考えれば、心身の健康を損ねる危険など、二の次三の次になるのも当然である。
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有名企業はステータスになる
健康に悪くてもやめない理由は、社会的にステータスの高い企業で働くことによって自分の価値を高めたいという動機である。
自分の専門性を活かせる職場に就き、社会的に尊敬を勝ち取る。この目標の為に、あるいはこの目標が実現されつつあると実感しているが為に、上昇志向の強い人たちはストレスの多い職場をやめようとしない。
有名で社会的地位の高い企業で働くことは、自分の価値や評判にプラスになるから、多少の犠牲はやむを得ないと考える人は極めて多い。
中には自分の仕事が楽しくて、倒れてしまうまで、辞めるなんて考えないという人も少なからず存在する。
逆に有名企業でも「Google」、「SASインスティチュート」、「コストコ」、「コンテイナー・ストア・グループ」、「メンズ・ウェアハウス」等は、「働きがいのある会社」ランキングで上位の常連であり、名実ともに履歴書に書くに値する企業だろう。
同じ産業、同じ地域、同じ程度の社会的ステータスであっても、個々の企業が力を入れる場所は違う。
社員の健康や家族の幸福に配慮する企業もあれば、そうでない企業もある。
となると、労働者の側には選択肢がある。職場を選ぶときには、心身の健康への影響をもっと真剣に考える方がよい。
これは、教育水準、立地、職種や業種を問わず言える事だ。
自分で選んだから辞めれない
人間は一度決めると、その意思決定に心理的に縛られるようになる。
これを心理学ではコミットメント効果(commitment effect)と呼ぶ。
とりわけ、その選択が心の中だけでなく、知人や家族に公言した場合や自分の自由意志でなされた場合には、その心理的な束縛が一段と強くなる。
例えば、自分で選んだ映画が全然面白くなくても最後まで見ようとするのは、いい例だ。
コミットメント効果はかなり強力で、自分が決心したことが上手く行かなくても、打ち切らずに様々な形で追加投資を行う。
また、一旦コミットメントすると複数の心理作用が始まる。
自分の決定には愛着がわく。自分が下した決断は間違いっていないとか、馬鹿な事をしたとを認めたくなから、悪しき職場にとどまり続けるのだ。
コミットメントは、途中で挫折する人だと思われたくないという気持ちから行動を縛る。
確かに、初志貫徹する人は尊敬され、すぐに諦めて尻尾を巻いて退散する人は軽視される。
それに頻繁に転職を繰り返すと、職場ではなく当人に問題があるのではないかとみられるようになる。
この様に様々な心理が実際には人の心の中で働いているのだ。
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彼が辞めないなら私も辞めない
私達は、何を期待されているのかを他者の行動で判断する。社会生活を送る中で様々なモノから受ける影響を心理学では、社会的影響と呼ぶ。
社会心理学者のロバート・チャルディー二は、いちいち自分で判断するよりも、他人の行動をまねし、他人が発信する情報を鵜呑みにするほうが認知能力の節約になるからだと指摘した
他者の行動や他人から得た情報によってその後の自分の行動や判断が影響を受ける心理作用のことを、心理学では「社会的証明(social proof)」と呼ぶ。
例えば、ある店の前に行列が出来ていれば自分もつい並んでしまう、一人が拍手をすればみんなが拍手をするといったことだ。
会社をやめられない理由に「君は有名企業で出世してすごい」とか「立派な職業だ」と知人や家族に言われれば、期待を裏切りたくなくなり会社を辞められなくなる。
社会的影響は強力で、ファストフード産業の転職について調べた調査では、転職が社会的に感染することが分かっている。
誰かが店をやめると、次々に他の人も追従する。逆に、辞める人がいないと、みんな長続きする。
ファストフード産業では悪条件の職場でさえ、辞めるかどうかが他人の行動に左右される。
同様に、みんなが身体はきついが面白くてやり甲斐のある仕事だと感じているなら、自分もそう思うはずだ。
みんなが最悪の職場に最悪の上司だと不満をたらしていれば、自分もそのように感じる。
受け入れるのを止める
人間は自分の行動を正当化する為にあれこれと理屈をつけようとする(これ自体は悪くはないが)能力というものは膨大である。
そのうえ、苛烈な職場でやる気満々の同僚に囲まれて、異常が正常になる文化にどっぷり浸かったら、辞めるのはますます難しい。
体を壊し、心を壊し、家庭も壊したと本人が自覚してさえ、なかなか辞められない。
そんな中でも私達に出来る事は、四つある。
第一に他人に影響を受けることを理解し、家族や友人と良い関係を築いている人と仲良くなり、できれば友達になって話をすることだ。
貴方の決断に正しいアドバイスをしてくれる可能性がある。
第二に、自分のプライドに拘ることをやめるべきだ。仕事の選択だって、他の選択と同じでミスをすると考えるようにする。
間違ったらそれを認めて正せばよい。
第三に、有害に働くことがいかに深刻であるかを理解するべきだ。
有名企業は、仕事が大変だと考えるべきでない。
動画配信サービスのフールの元社員は、転職して新しい職場で働き始めても、前の職場のストレスがしつこい付きまとったと発言している。
元社員はそれを「職場のカバン」と表現している。
英語ではカバン(baggage)に「心の悩み」という意味合いがあり、ストレスはカバンのように前の職場から持ち込まれるのだ。
第四に、何より重要だが、次の仕事を選ぶときは、職場のストレス要因や健康面を重視することである。
働くのはお金の為だけではないだろうし、お金では壊れてしまった家庭や人間関係、身体の健康も修復できない。
誰もが心身の健康を優先して職場を選ぶようになるまで、経営者は社員の健康を十分に配慮することにはならないだろう。
終わりに
今回も視点は海外ですが、日本にも割と当てはまる事なので参考になれば幸いです。
併せて読みたい記事に会社に関する記事もあるので宜しければ、どうぞ
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