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新奇性を持つ
新奇性とは、目新しさの事で、普段の何気ないルーティンを打ち破るのに必要な様相である。
人と言うのは、大きな変化が嫌いな割には少しの新奇性を持ちたがる。
我々の感情は、逆U字型をしており、目新しい物には少しネガティブな感情を抱く。しかし、繰り返しそれに晒されるとだんだん親しみが感じられるようになり、次第にポジティブな感情へと変化する。
最終的には、それを見飽きたせいか退屈を感じ始める。(1)これらの感情の移り変わりを事を、ゴルディロックス効果と呼ぶ。
あまりに斬新だと、親しみが感じられないが、あまりに親しみすぎると、退屈になる。だが、その中間であれば、丁度よい。
最近、そのような新奇性に富んだ生活を送っているだろうか。いつもと、少し違う道を通るのも立派な新奇性だ。
これらの事は、会社の地位を得るための力にもなる。
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無駄を受け入れている
先ほど新奇性の話をしたが、今度は私達が思いの外で無駄な行動を無意識に受け入れていることについて話したと思う。
例えばイェール大学の研究者によると、子どものは大人を忠実にマネするあまり、大人の間違いまで模倣することが分かっている。(2)
また、フランチェスカ・ジーノはこの現象を調べる為にある実験を行った(3)。
参加者を4人のグループに分けて、サクラのチームがTシャツをたたんでいる部屋に連れて行く。
一部のグループには、サクラが効率的な手順でTシャツを畳んでいる姿を見せ、別のグループには、いくつか無駄な手順を紛れ込ませたTシャツの畳み方を見せる。
また全参加者に実験開始に、時間内に畳んだTシャツの枚数に応じて報酬を払うことを知らせる。
グループはそれぞれ、サクラを二分間観察してから、畳み始める。
10分間畳むと、別のグループがそれを引き継ぎ、また数分経つと交代でそれを引き継ぎながら畳んだ。
そしてこのプロセスを6回繰り返す。
結果として、非効率な畳み方を見た参加者の87%が、その行動に何の疑問も持たず模倣し、効率的な畳み方の参加者よりも低い報酬を得た。
これは実生活でよくあるように、無意味なプロセスを文句も言わずに受けれいている人が多いことを表している。
私達が何も考えずにやっている行為の多くは、思慮深い考えの元で生まれた訳では無く、単に日々の繰り返しの延長線上に来ているだけだ。
この様に、我々は思ったよりも何も考えていなという事が分かった。
現状維持バイアスが原因?
現状維持バイアスやバイアスという言葉を、聞いたことがあるだろうか?
元々は、経済学者のウィリアム・サミュエルソンとリチャード・ゼックハウザーが、1988年に出した論文が元になっている。(3)
彼らは、実験参加者に意思決定の課題を与え、複数の選択肢から自分の取るべき行動を選んでもらった。
一部の課題には現状維持の選択肢が含まれ、残りには含まれていない。
結果としては、参加者は現状維持の選択肢を与えられると、たとえ他に客観的に劣っていたとしてもそれを選ぶ可能性が高かった。
日常の決まったルーチンから逸脱するのは、損失と見なし、利益よりも損失に我々はずっと敏感だ。(4)
もし勝率が50%の賭けがあったとしても、利益が損失の二倍以上にならなければ挑戦する事はない。
現実的には恐怖に尻込みして、勝てるチャンスでも現状維持に努める。
いつもと違う道を通るぐらい問題ないだろう。でも、こう考えるかもしれない「もし、いつもの通勤ルートを外れたせいで会社に遅刻したら?」、一度そんな風に考え始めたらもう現状維持バイアスが働いて「やっぱり同じルートでいいや」となってしまう。
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変化になれる
今の時代では、その変化の振り幅も異様に高いだろう。
今日の常識が1年後には非常識になっているなってことも考えられる。常にこちらが変化する事を要求され、出来ない者はどんどん取り残されていく。
そして予測不可能性は不安を招くが、驚くほど根深い新奇なものへの欲求を持っている。
1860年代にドイツ人の動物学者アルフレート・ブレームが、数匹のサルのいる檻に、蛇のはいった蓋つきの箱を置いた。
サルたちは、ふたを開けて震えあがるが、何度も蛇を見る為に蓋を開けた。(5)
この研究以降、人間も他の動物も新奇性に抗えない事が分かっている。
昔話で「この扉を覗いては行けません」と言われて最後まで守った男が居ただろうか?
ノースカロライナ大学チャペルヒル校のブラッド・スターツは日本の銀行の住宅ローン審査部門で顧客の申し込みを処理する行員から得た2年半のデータを分析した。(6)
分析の結果は、一定期間内に多様な作業を与えられた行員ほど、作業処理時間が高かった。
新奇性は仕事満足度や創造性、自信などを高める効果がある。
また、アッシュランド大学のブレント・マッティングリーとモンマス大学のゲーリー・レバンドフスキが行った実験がある(7)。
参加者には事実を並べたリストを見せるが、一部の参加者には興味深く、意外性のある事実リストを渡した。
残りの参加者には、当たり前のような面白みに欠けるリストを渡した。
興味深い事実を読んだ参加者は、そうでない人よりも自分は知識が豊富だという意識を高め自己効力感が向上し、新しいことが成し遂げられると自信を深めた(8)。
これらの事は、直接的に権力獲得へと繋がらないようにも感じられるだろう。
しかし、新奇性を持った行動を意識的に取るようにすれば、今まで慣習的でしか見てこなかったモノに対して新たな側面を発見し、それが自分のモチベーションアップに繋がり創造性を搔き立て成果を出す手助けになるだろう。
そのように行動できれば、ゆくゆくは社内で地位の高い役職になるチャンスも巡ってくるに違いない。
終わりに
毎度の事ですが、始める時にはまずは小さく行動するといいですよ。いきなりガラッと行動を変えてしまうと、かなりのストレスになるので。最初にも話した、ゴルディロックス効果を思い出して日々の生活に変化を取り入れて頂ければ幸いです。
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参考文献
・(1) Maddi, Salvatore, B. Propst, and I. Feldinger (2006), "Three Expressions of the Need for Variety," Journal of Personality 33, 82-98.
・(2) Derek E. Lyons, Andrew G. Young, and Frank C. Keil, "The Hidden Structure of Overimitation," PNAS 104, no. 50 (2007): 19751-19756.
・(3) Francesca Gino, "Taking Organizational Processes for Granted: Why Inefficiencies Stick around in Organizations, "Prganizations," Working paper, 2016.
・(4) Daniel Kahneman and Amos Tversky, "Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk, " Econometrica 47, no. 2 (1979): 263-291.
・(5) Alfred Edmund Brehm, Brehm's Life of Animals: A Complete Natural History for Popular Home Instruction and for the Use of Schools, trans. R. Schmidtlein (London: Forgotten Books, 2015 [1864]).
・(6) Bradley R. Staats and Francesca Gino, "Specialization and Variety in Repetitive Tasks: Evidence from a Japanese Bank," Management Science 58, no. 6, (2012): 1141-1159.
・(7) Brent A. Mattingly and Gary W. Lewandowski Jr., "The Power of One: Benefits of Individual Self-Expansion," Journal of Positive Psychology 8, no. 1 (2013): 12-22.